2024年3月12日

ブックショートアワード

短編「父をたずねて三十里」が、第10回ブックショートアワードの12月期優秀作品として選出されました。

作品の条件は、パブリックドメイン(著作権切れ)の二次創作であること。アレンジや新解釈、スピンオフなど何でもあり。

本作は、イタリアの作家エドモンド・デ・アミーチスの『クオーレ』、日本では「母をたずねて三千里」でよく知られる、アニメにもなった名作の「森水解釈」ですが、さていかに。

以下のリンクから、作品の閲覧が可能です。

https://bookshorts.jp/20231201c


2024年2月14日

西脇順三郎賞新人賞

詩篇「朱の友」が、第2回西脇順三郎賞新人賞にノミネートされました。
詩はこれより、人の目からほどかれ、時の俎上にのぼります。多謝。

※視聴方法 スマートフォンの場合、画面内の「Listen in browser」をタップ。




2023年8月22日

寄せる波で組み立てた椅子

矢野顕子さんの『ひとつだけ』の歌詞に、心をはっとさせるいくつかの「ほしいもの」が登場する。きらめく星くずの指輪であったり、世界中の花を集めて作るオーデコロンであったり。

ここで言う「ほしいもの」は、受け取り手からのまなざしであるが、私はむしろ、悪戦苦闘しながら、それでも不思議と笑顔になってしまう送り手・作り手のほうに、思いを馳せてしまう。

おそらく私が身のまわりのものを作りたがるのは、そこに原点があるからで、さらに言うなら受け取り手としての喜びも、一石二鳥的に味わえてしまう。「こんなのほしくない?」「それそれ、ほしかったやつ!」という小芝居が、手を動かすかぎり情熱的にロングランされる。

というわけで、ここ
1年ほどで仲間入りしたいくつかを。




【長猫のカードケース】

カード決済のたびに長財布を取り出すのは、面倒かつ余計な劣化をまねくだけなので、押し入れに眠っていた革の端切れで、フリーハンドでこしらえてみる。わざとらしくないゆがみで、手縫いでチクチク。何かいいワッペンはないかとネットで探してみると、クスリと笑いを誘う長猫を発見。しかし少しばかり大きい。じゃあ革の裏地で作ればいいじゃないかと、結果的に、スエード風の肌ざわりも大満足。運がよければスーパーのレジで人気者になれる。




【マグのぴったりふた】

だだっ広いワンフロアの、野外からの風が吹き抜ける瀬戸内の豊島美術館・母型。その床に、いつまでも終わりなくコロコロと、水滴の群れが好き勝手に転がっているのだが、寺井陽子さんのマグでホットミルクを飲んでいると、そのときの光景がふと思い出される。
どこか生き物の気配をやどした、手びねりのマグと喧嘩しないかたちの、ガウディ曲線のぴったりふた。冒険好きなハエトリグモの、思わぬ不慮の事故もこれでなくなるはずだ。





【メロンパン時計】

断捨離とはほど遠い、物だらけのカオスを面白がる性格なので、ちょっとした掃除のさなか、四半世紀ぶりに腕時計と再会を果たすこともある。ただ、すでに日常使いのレギュラーは、便利なスマートバンドと、自動巻きのマックスビルで埋められているので、残念ながら出番はない。鼻息荒くみがき上げて、ヤフオクに出すまでの商人魂もない。

だったらいっそのこと、ロレックスの中身をくり抜いてそこにビスケットを詰め込んだ所ジョージさんよろしく、焼きたてのメロンパンを放り込んで、非常時に備えるのはどうか。もちろん食品サンプルなので、腹はふくれないし、かじっても前歯が欠けるだけなのだが、間違いなくこれまでよりこの時計が好きになるし、あこがれの馬鹿な大人でいられる。





【ハウルの動かぬ城】

YouTube
をザッピングしていると、どこからその発想と情熱が湧いてくるのだと、驚きとともに嬉しくなってしまうクリエーターに出会うことがある。

Studson Studio
HOWL'S MOVING CASTLE out of junk



私もある意味では、上記の彼に負けないぐらい宮崎駿さんのファンである。
たとえば製作過程を追った12時間半のドキュメンタリー『ポニョはこうして生まれた』の映像を、しつこいぐらい見返したおかげで、いまだにアトリエ 二馬力の間取り図をそらで書き上げることができる。歩行者を驚かせないよう、シトロエン・2CV(ドゥーシーボー)のクラクションに詰めものをして満足げな、宮崎さんの笑顔をありありと思い出すことができる。

YouTube
動画内の「ハウルの動く城」は、私には逆立ちしても作ることができないし、たとえ挑戦しても似ても似つかぬ劣化バージョンとして、自分をがっかりさせるだろう。色味が忠実に再現された、立体のペーパークラフトもあるみたいだが、高さ43センチとかなり大きく、おまけに設計図どおりの同じ完成品が、私の知らないところでこれからも増え続けていく。
というわけで、手のひらサイズの、もとは銀一色のずしりと重みのある、阿随(あずい)金属工房の工夫をへたハウルの動く城を購入した。オリジナルに寄りかかりすぎずに、時間をかけて色づけし、ウェザリングの汚しとサビも取り入れた。


いまもノートパソコンのすぐそば、視界の片隅にそれは「動かぬ城」として鎮座している。座禅のさいの、肩を打つ警策(きょうさく)ではないが、執筆中の気のゆるみを、たしかにいましめてくれるのだ。私を立ち止まらせ、言葉なく語りかけるのだ。どこかで見た定番の景色をうっかり作品に取り入れそうになったとき、浅瀬を渡ろうとせず、さらに深く深くもぐりなさい、未知の湧水の響きにじっと耳を澄ませなさいと。

2023年6月23日

短編「池の中の教会」収録、学研アンソロジー集発売のお知らせ

「池の中の教会」が収録された短編アンソロジー集が、学研から電子書籍として発売されました。監修はショートショート作家の田丸雅智さん、合計22作品が収録され、アマゾンキンドルのほか、楽天KoboやAppleBooksなどの主要な電子書籍ストアで購入が可能です。

また、ベネッセの会員サイト、進研ゼミ「まなびライブラリー」にも、近いうちに仲間入りするそうです。自分の作品はさておき、長く読まれるといいですね。物語はときに、腹持ちのいい栄養として、子供たちの根をじっくり育て、心を豊かに、また強靱にするはずなので。人と違うことを恐れない、うたがいの眼差しを養うはずなので。



『カプセルストーリー(3分間のまどろみ)』
AmazonKindle  https://www.amazon.co.jp/dp/B0C8YSYR5R 



2022年12月21日

アマゾンキンドル電子書籍、再出版のお知らせ

アマゾンで販売している電子書籍の一部を、いったん販売停止し、あらたに別の版として再出版しました。理由は、嫌がらせレビューへの苦渋の対応となります。

現在、アマゾンキンドルで扱っている電子書籍は、販売数、およびキンドルアンリミテッドの読み放題による読了ページ数が、すべてリアルタイムのデータで把握されています。

残念なことに、ここひと月ほどのあいだ、あきらかに悪意を含んだ「感想文の一切ない低評価、あるいは星一つのレビュー」が、複数の書籍にわたって多数つくことになりました。ある書籍にいたっては、直近の売り上げがなく、また読了データが少数にもかかわらず、感想なしの低評価が、立て続けに七つつきました。

それが複数のアカウントを使い分けての個人によるものなのか、それとも仲間内で結託したほの暗い結果であるのか、私にはわかりません。また、どのような私怨があるのか、あるいは嫉妬の感情の結果なのか、あるいは気まぐれな嫌がらせなのか、やはり定かではありません。
たしかなのは、それは私ではなく、書き手自身をおとしめる行為にほかならないという事実です。一時的な満足、達成感はあるかもしれませんが、かならず負の揺り戻しがやってくるでしょう。

私から言えることは一つです。どうかそのエネルギー、マイナスの衝動を、一度奥歯でかみ殺し、自身の成長のために使ってください。他者へのいたわりに使ってください。

アマゾンのカスタマーセンター、および電子書籍専門部署を通しての、事実の確認、個人の特定は可能ですが、いまのところそのつもりはありません。いつか別のかたちで、明るく風通しのいいどこかで、作品を介してあなたに再会できることを願うばかりです。

最後になりましたが、星の数にかかわらず、これまで真摯にレビューを書いて下さった方には感謝申し上げます。文章は消えましたが、温もりは残ります。