2025年12月22日

冬旅 2025 約束の地へ


自筆の詩に刻んだ約束を果たすため

15年ぶりに沖縄を歩いてきた

最北のヤンバル、辺戸岬から
離島の聖地、久高島まで
のべ5日、400㎞あまり















はじまりは、分断のつづく辺野古の泣き浜
ひと気なく、抗議の看板もすべてはがされ
遠く響く、ブルドーザーのうなりに圧され
すでに下火かと思われた、北上への道
キャンプシュワブの入り口に、しゃがみの人鎖
うちわ太鼓を響かせる10人ばかりの老人が
車窓ごしの数秒、目尻から消えて、陽に白む


ヤンバル、八百万、石の森








陽とかげり
隣り合わせで
交わらぬ

宿泊したオクマビーチの遠く
沖縄愛楽園の敷地から望む
一方通行の歴史横たわる、無名の浜





橋三景

一村のアダン
偶然の額縁
東亜の妖精








今帰仁(なきじん)グスク再訪




15年前の中城(なかぐすく)だったか
丸まった子象ほどの、茂みの葉むらから
蝶の群れがいっせいに飛び立って
白い、ひらめきの花を目の前で咲かせ
白昼の夢に、しばし立ち尽くした思い出







色と人の洪水













波と人の止水




久高島への道しるべ

15年前に訪れた本島南部の
斎場御嶽(せーふぁうたき)

コロナ禍と、香炉盗みのため
大岩の切れ目を抜ける最奥の
ささやかな祈りの場への道は
すでに閉ざされたと聞く

拝所、三庫理(さんぐーい)
ひだまりの石畳から目を移せば
緑の雲海を横切らん、蝶のつがい
はるか遠く、水平線に久高島がにじみ
焦がれは冷めることなく、結晶化する




狛犬ならぬ、島の狛猫、凛として

多くの訪問者が、レンタサイクルで最奥の
カベール岬を目指すようだが、そこはへそねじれ
次のフェリーまでひたすら、民の暮らしを巡り歩く

京都の寺社の密度より、島の拝所は濃く
御嶽(うたき)銀座のおもむきで、神々が集い



ファーブル嘘つかない、歩いて大正解だった

足下ではヤドカリが、取っ組み合いのお家騒動
頭上では当たり前のように、桑の実が黒々とみのり
我ここにありとばかりに、ごんたくれの足跡が点々と





帰島し、人間世界に身体をならす








最終日、時計の針にしばられず
ひめゆりの塔と、平和祈念公園へ




献花売り場の、ニコニコおじぃ
おまけのハイビスカスをつけてくれ
ならばこちらも、おつりの百円玉を、笑みがえし




途切れた命のつづきを胸に
心しずかに、空に昇る
つぎはぎのまほろば
窓の向こうに




詩集『九月十九日』より 

「てぃんさぐの花」





2025年12月1日

シナリオ『子抱き富士』掲載のお知らせ


第12回ブックショートアワード9月期優秀作品として、シナリオ『子抱き富士』が選出されました。以下のリンクから、作品を読むことができます。

https://bookshorts.jp/wp-content/uploads/2025/11/d2894b094b31e8df1c3d54da36fe3983.pdf

また、AmazonKindleで発売中の『森水陽一郎作品集』にも、シナリオが5本収録されていますので、もしご興味があれば。(60分×4・120分×1)

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B09B6LZKW2/



2025年11月1日

新詩集、発売のお知らせ


詩集『孤牛』(こぎゅう)が、ふらんす堂より刊行されました。



表紙にたたずむ木彫は、沢田英男さんの作品、撮影はGallery夏至の宮田法子さん、装幀は、ふらんす堂・和兎さんの手を借りつつ、私が担当しました。




カバーの紙は、マットな風合いの「風光」

布装に、自作した図柄を空押し。背に黒メタルの箔押し。






横並びの図柄の意図は、詩集を読むことであぶり出される。




透過する化粧扉は、手漉き和紙を
思わせる「シープスキン」



見返しの「NTラシャ若葉」の色味は、詩集の序に引きつがれて。




詩集『九月十九日』以来、担当の山岡有以子さんとは10年ぶりのタッグ。
今回もまた、自由闊達、日当たりのいい園庭で大きく羽をのばすことができました。

そして詩集を編み終えて、あらためて気づかされました。
実験的な試みや、衒学的な虚栄とは遠く離れた、まだ詩と出会うことのない自分、読み手に向けての、心の揺れをいざなう物語しか書けないし、書きたくないのだなと。深い深い森の奥、小さな種火を一から育て、偶然の迷いびとと言葉なく語らい、結果としてこの世界に、ささやかな黎明の風を起こしたいのだなと。

それを私は、人の根っこを介してつながる「物語詩」と呼びますが、散文詩と何が違うのだとたずねないでください。きっと答えは、物語の数だけ隠れているはずで、輪郭を羽織らせるたびに、するりと袖口から抜け出してしまうはずですから。

おしまいに。
本詩集の内容紹介にかえて、献呈紙にそえた一筆で、結びとほどきを。



詩集『孤牛』

B6判 上製カバー装
2025年11月5日刊行

以下のページ内、各オンライン書店、実店舗のリンクあり
https://kaiin.hanmoto.com/bd/isbn/9784781417868

ふらんす堂 
https://furansudo.ocnk.net/product/3201

【サイン本・期間限定販売】
新詩集を含めた過去の著作を、サインを入れ、期間限定でメルカリ内で販売いたします。匿名配送なので、個人情報の秘匿性が守られています。送料無料の販売ページは以下に。

メルカリURL https://tinyurl.com/3j9n7hmn