実用の美から、あったらいいなまで、
ちょちょいのちょいで、こしらえてみる。
【古代香水】
杉の宝珠に、土台はひのき、ずんぐりとした香水の瓶をイメージ。
ひのきの香りは揮発性でほどなく消えるが、どっこい、底面だけは薄れていかないことを、事前の実験で学んでいる。もし薄れても、さっと紙やすりでこすれば見事復活。
鼻先をかすめ太古は森の精
【縄文シキ鍋シキ】
ワンコインショップのシリコン製も、安価で使い勝手がいいが、フライパンの直置きは、どうしても熱がテーブルに伝わってしまう。
小さいほうの鍋敷きは、少し分厚い紙ひも製で、ステンレスの鍋用。大きいほうは、鉄のフライパン用。麻ひも製で、形を自在に曲げられ、円のとんがり部分から、底面の熱気を逃がせるように工夫した。
【ハリヤマ・ハリモグラ】
見本になるものはないかとネットをさぐってみると、フォルムのかわいい売れ筋の、ハリネズミの針山が圧倒的に多い。
そこはへそ曲がりの、人生なな曲がり、あえてハリモグラをチョイス。お腹の空洞には綿を詰め、端切れの革で、底に栓。実際の出番はほとんどないが、作業机の片隅にいるだけで、どうやら眉間のしわ防止に寄与している。
【高台厨子・杉の葉寿司】
柿の葉ならぬ、杉の葉の手作り線香。
庭先の落ち葉を拾い集め、細かく砕いて、くわえるのは水のみ。
三ヶ月だけともに暮らし、腎臓病で旅立った迷い猫のポッケ。
家の裏の高台に、毎年命日になると花がつおをそなえるのだが、そこに香食(こうじき)をそえて、満腹を願う。最後は流動食どころか、水さえ飲むことができなかったので。
【スカラベ飛ばず之介】
現地の土産物のスカラベを、古代エジプトの出土品といつわって、オークションに出品している商魂たくましい人たちにも、学びはある。
本物までさかのぼると、思いのほか粗野で素朴、釉薬の工夫もなく、ずっしりとあんこのつまった大福のような重量感があり、宝飾よりも護符としての空気をまとって、わざとらしい汚しとは無縁だ。
博物館級の品はもちろん手に入るわけもなく、じゃあいっそのこと、手ごろな土産物を落札するよりも、自分でこしらえてみようと思い立つ。
汚しや釉薬はなしで、土の風合いにまかせて(といってもオーブン粘土だが)焼成し、低温で焼きが甘くなる分、仕上げの手油が染みて、味になる。
背中に走る翅の縦ラインと、付け根の三角の小楯板(しょうじゅんばん)は、あえてなくした。高く飛び立つよりも、愚直に地を這うほうが好きなので。