2022年3月23日

シロクマは樹氷の夢を見る

去年から今年にかけて、フランソワ・ポンポンの彫刻作品をまとめて見る機会があり、気が向いてオーブン粘土を買ってみる。代表作であるシロクマを作ってみようと思い立ったのである。

わざわざそんな手間をかけなくても、1万円ほどで精巧なミニチュアが売っている。樹脂に石の粉をまぜ込んだ、一つ一つ手仕上げの、じつに丁寧な作りで、なでても
飾っても不足はないだろう。

たしかに実物に近ければ近いほど、所有欲は満たされるが、そこに魅力は感じない。知りたいのは、作り手としての創作の過程であり、思いもよらない道の起伏である。つまずきからの発見と学びは、もちろんどの通販サイトにも売られていない。



ポンポンのシロクマにかぎらず、彫刻作品の肝は「途上の切り取り」にあると考えている。不動だからこその、動きの気配、筋肉の躍動、風とのたわむれ、いのちの盛衰。かといって、やはりポンポンの物真似では面白くない。
YouTubeシロクマ動画をお手本の骨格にして、うつぶせの寝姿の肉付けは、独学の木彫家、渡辺雅人さんの作品から。





迷い猫ポッケの追悼以来、おおよそ一年ぶりに粘土をさわってみたが、作品の出来不出来に関係なく、土をこねて何かを形作ることは、純粋に愉しく、それでいて懐かしい思いをいだかせる。それは幼少期の思い出のさらに向こう、もしかすると縄文の過去へとつながっているのかもしれないし、あるいは土(アダマ)のちりをこねて始まりの人間をこしらえた、神様の手のひらに、うっかりふれたからかもしれない。


「シロクマは樹氷の夢を見る」 
L17×W9.5×H6.5