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『月影という名の』
装幀コンセプト
詩集の題名である「月影」の影には、本来「光」という意味も含まれており、モデルとなった石彫家の佐野藍氏の黒、そして作品「サクラオオカミ」の大理石の白を対比させることで、分かちがたく一つの月を体現している。また、金の箔押しを用いた題字は、月の光をあらわし、元画像の影を生かすかたちで左上に配置している。
カバーの折り返し部分の、墨色のにじみは、明から暗への月の満ち欠け、輪廻の運行の移り変わりをイメージしている。帯は浮かないよう、カバーと同質の紙で薄刷り、裏側に刷られた二匹の「卵ヘビ」は、書籍の本体部分に、から押しのかたちで影を形作っている。
扉部分に大写しされた満月は、あえて薄刷りを用い、クレーターを思わせるざらついた紙質を際立たせている。それと同じく、本体表紙の紙質も、指の腹をくすぐるざらつきの強い紙を用い、詩集に通底して描かれた土地、新月の闇に揺れる、九十九里の凪の海面をイメージしている。また、本文7ページ、題名の下に記された著者のサインは、作中に何度かリフレインする「投壜通信」という言葉を具象化したものであり、影となった卵の図柄は「一人きりの始まり」を意味し、前述の、孵化を迎えた二匹の卵ヘビを結末に配置することで、結びの詩の内容を補完する、あらたな歩みのしるしを示唆している。
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