2014年8月17日

新刊のお知らせ

長編小説『鉛を飲んだ獣たち』と、シナリオ集『くまをかえしに』が、AmazonKindleストアより発売されました。

『鉛を飲んだ獣たち』

ある冬の日、「穴むぐり」という不可解な言葉を残して、忽然と姿を消してしまった妹の麻衣。兄である「私」は、気鋭の作家であり麻衣の夫でもある田部よしゆきとともに、行方の手がかりを探す。その過程で、「私」の知らない場所でそれぞれの「一人称の物語」は進行し、穴むぐりの対となる象徴としての「塔」に、終戦後のシベリアを交えて、多義的に導かれていく。




『くまをかえしに 【シナリオ集】』

東日本大震災を機に福島から神戸へとやってきた女子高生の瞳が、檻に閉じ込められた年老いたツキノワグマを、洋菓子店を営む一家とともにいまだ立ち入りの制限された大熊町に還すための日々を描く『くまをかえしに』。 

養父母の自死をきっかけに、遺書がわりの手紙で実の母の存在を知ることになる十歳の勇人、手紙の住所をたよりに外房の鴨川に向かい、戦争経験者の祖父と対面し、母に隠された秘密を知ることになる『息子、かえる』。 

夏休みの自由研究のため、東京から祖父の暮らす兵庫の姫路へとやってきた双子の幸太と美幸。一家の歴史をひもとくうちに、亡き父親が残した「あるもの」を目にすることになる『姫じい!』。 

河川敷に暮らすホームレスの老人を、花火の事故であやめてしまった小学生の公一と大介。二十五年ぶりに、修験道の先達(せんだつ)と山伏修行の体験者という立場で再会を果たし、二泊三日の修行体験によって、目の前に横たわる多くの問題を受け入れ、乗り越えていく『ザンゲザンゲ』。 

津波によって妻と娘を失い、放浪でもするように太平洋沿岸を九十九里まで歩いてきた純平。命を投げ捨てようとするところを近くの民宿で働く真理に救われ、彼女にいざなわれるかたちで老人たちが暮らす森の施設に向かう。そこでいまだ行方知れずのままの妻と娘を、純平は目にすることになり―『道たどる朝に』。