佐野さんの作品の魅力の一つに、しなやかでたくましい空想力、イマジネーションの飛躍があると個人的には思っています。
幼いころに公園の落ち葉の下に垣間見た、青いうろこをぬらりと光らせるトカゲ。彼女にとって「小さな恐竜」として焼きつけられたその美しさ、なまめかしさは、長らく心の深い場所に、色あせることなくじっと棲みつづけ、ほどなくアニメやゲームのキャラクターがまとう、奔放な血肉を取り込むかたちで、空想上の、無二の生きものへと変貌を遂げていきます。
もちろん便宜上、作品には幻獣や神々から引用した呼称、「ドラゴン」や「バステト」の名が分け与えられますが、その細部には否が応でも、彼女の歩んできた生き方の姿勢、まなざしの純度と強度が、ごまかしのきかない「己の足跡の表出」として反映されます。
鑑賞者は技巧やテーマのさらに奥、言葉の世界から離れた深い深い原始の森に、じっと目をこらします。ふかふか落ち葉の、曲がりくねった小道の先には、なつかしい陽だまりが揺れる、ささやかな広場が待っています。きっとそこには、目を輝かせてそっとトカゲに手を伸ばす幼い佐野さんの姿があり、それは彼女にとって、枯れぬマグマの源泉であり、好奇心の小さな師であるのかもしれません。
順風満帆、いざ出立。
原風景への憧憬は、いつだって歩みの靴ひもを結び直してくれるし、その背中に未来の追い風を知らせるはずです。
順風満帆、いざ出立。
原風景への憧憬は、いつだって歩みの靴ひもを結び直してくれるし、その背中に未来の追い風を知らせるはずです。
【アートフェア東京2019】
アルビオンの陽 Radiance of Albion
会場 国際フォーラム 展示ホールB1
(B1エリアは全日程、入場無料)
3/7 (木)14時~20時(B2本会場は招待制)
3/8 (金)11時~20時
3/9 (土)11時~20時
3/10(日)11時~17時