2019年2月25日

アートフェア東京 佐野藍さん個展『アルビオンの陽』のお知らせ

詩集『月影という名の』の表紙でお世話になった石彫家の佐野藍さんの個展が、37日より、東京駅すぐそばの東京国際フォーラムにて開催されます。世界各国から美術関係者が訪れる、日本最大のアートフェアでの晴れ舞台、新作の大理石ドラゴンが11点も展示されるそうで、辰年生まれとしては行かない理由がありません。

佐野さんの作品の魅力の一つに、しなやかでたくましい空想力、イマジネーションの飛躍があると個人的には思っています。
幼いころに公園の落ち葉の下に垣間見た、青いうろこをぬらりと光らせるトカゲ。彼女にとって「小さな恐竜」として焼きつけられたその美しさ、なまめかしさは、長らく心の深い場所に、色あせることなくじっと棲みつづけ、ほどなくアニメやゲームのキャラクターがまとう、奔放な血肉を取り込むかたちで、空想上の、無二の生きものへと変貌を遂げていきます。
もちろん便宜上、作品には幻獣や神々から引用した呼称、「ドラゴン」や「バステト」の名が分け与えられますが、その細部には否が応でも、彼女の歩んできた生き方の姿勢、まなざしの純度と強度が、ごまかしのきかない「己の足跡の表出」として反映されます。
鑑賞者は技巧やテーマのさらに奥、言葉の世界から離れた深い深い原始の森に、じっと目をこらします。ふかふか落ち葉の、曲がりくねった小道の先には、なつかしい陽だまりが揺れる、ささやかな広場が待っています。きっとそこには、目を輝かせてそっとトカゲに手を伸ばす幼い佐野さんの姿があり、それは彼女にとって、枯れぬマグマの源泉であり、好奇心の小さな師であるのかもしれません。

順風満帆、いざ出立。
原風景への憧憬は、いつだって歩みの靴ひもを結び直してくれるし、その背中に未来の追い風を知らせるはずです。



【アートフェア東京2019
アルビオンの陽 Radiance of Albion
会場 国際フォーラム 展示ホールB1
B1エリアは全日程、入場無料)
3/7  (木)14時~20時(B2本会場は招待制)
3/8  (金)11時~20
3/9  (土)11時~20
3/10(日)11時~17